■技術の利用に伴うリスク管理に関する事例

 

事例3:不足だったプレストレス

 


(1)経緯
工事が完成に近づくと、当社では支店の工事部が施主の完成検査前に品質検査(スペックどおりに出来ているかをチェック)を行うことになっていた。その完成前社内検査でストレスのデータがおかしいことを検査に来た上司が発見した。

 

この事実は、ただちに支店長に報告され、社内の対策チームが編成された。技術本部長中心に対策案が練られ、発注者に補修案(カーボンシートを貼付し、不足のストレスを補うもの)を上申。

 

発注者は、スペックどおりにこだわりつづけたので、本社に持ち帰り社長、業務部長をまじえて決定のための会議が持たれた。工期が迫り、発注者の意向もあるので完全な作り直しが全員一致で決定された。

 

 


(2)背景
①この事件の1年ほど前に小さなトラブルがあり、発注者との打ち合わせに時間が掛かりすぎて大幅に工期を割ってしまった経験があり、早い決断と処理がベストの判断であるとの結論が出やすかった。


②クレームや施主とのトラブル、現場での問題点は、社内構築されたグループウエアーというネットワークに誰でも自由に書き込み相談が出来、誰でもそれに対して意見が述べられる仕組みになっており、情報の共有化が完成し徹底していた。従って、支店だけでこの情報を隠すことは絶対に出来ない仕組みになっていた。

 

 


(3)事故の原因
現場担当者はその工事を担当する直前まで、設計部に所属していて現場担当は初めてであった。現場管理表の中に緊張管理図があり、管理限界に近づく異常データが発生していたが現場経験が少なく問題視しなかった。社内のサポート体制も、未経験者に対して十分ではなかった。管理不足は否めない。

 

 


(4)処分
現場担当者とその上司に対し減給。

 

 


(5)再発防止対策
①社内検査体制の充実
②技術力向上のための教育の強化
③社内管理体制、サポート体制の強化

 

 


(6)発注者の評価
他の自治体の指名停止なし。
おおむね同情的、好意的。されどこの件で受注増なし。
信用の強化には明らかに繋がっている(技術本部長)。

 

 


(7)解決のポイント
思い切った対策を早い時点で決断。
最悪のやり方は、対策をツーリトル、ツースローでやること。

現在でもあの決断は正しいと信じている(技術本部長)。