建築倫理に関する教育ツール

 

日本建築学会HP

設計行為における設計者の倫理目標リストとその解説

構造設計者・技術者の倫理的判断問題

倫理目標リストを用いた授業への展開

「建築構造分野における専門家の倫理目標リスト」(略称:倫理目標リスト)

「建築構造分野における専門家の倫理目標リスト」の解説

建築環境倫理

1. 小委員会の活動と公開に当たって

 日本建築学会建築倫理研究小委員会では、本会倫理委員会が2009 年に行った建築界における倫理教育の現状をさぐるアンケート調査結果を受けて、現在行われている倫理教育を補強するための教育ツールの開発を目的として活動を行った。高専・大学等での高等教育では、倫理教育は教養科目や初学者教育で行われている低学年向け、建築技術者倫理に特化した高学年・大学院向けなど、いくつかのパターンに分類できること、対象学生には建築学科学生のみの場合と、広く工学部、全学生向けとするものがあることが分かった。教科書としてはさまざまな書籍が利用され、学外講師やビデオも組み入れた複合的なプログラムが構成されている。教育方法の工夫として、事例分析の他にグループディスカッションやポスター発表等が導入されていた。

 倫理教育は人から人への教育であり、無形で見えづらい、答えもひとつではない。これらの状況もふまえ、建築倫理研究小委員会では、2003 年刊行の「建築倫理用教材」の見直しを開始しつつ、ホームページで公開する形をめざして「建築設計倫理」と「建築構造技術者の倫理」について、建築物に関わる倫理を教育する際の目標設定、目標の解説、授業への展開などを検討し、設計者としての倫理観の涵養、授業における教育目標の明確化や学生の主体的な学習に貢献できるサポートツールの作成をめざした。これらのツールは若手設計者への企業内研修などでも利用が可能である。

 さらには「建築環境倫理」について、建築分野の中でもこれから重要な位置づけになると考えているが、いまだ根源的であり具現的なところに追い込みきれていない。

 これらは、当小委員会のもとに置かれた3つのWG により個別に検討されたものである。そのため、成果物の形式は統一されてはいない。構造分野での検討では倫理教育内容の体系化と教育ツールの開発を念頭に置きつつ、授業プログラムへの具現化とその試行までを行っている。これらの成果物はホームページを通じてまず公開し、学会諸会員を中心に広く意見を聴取し、よりよい形にまとめていくための第一段階として公開したものである。2015 年度の日本建築学会大会(関東)でも研究懇談会を開催する予定であり、討論に参加いただきたい。また、広くお気づきの点や意見を本会にお寄せいただきたい。

 これらの教材の活用を通して、建築倫理教育が一層推進されることを期待したい。

 

2015年4月
建築倫理研究小委員会
主査 石川 孝重

2. 建築設計倫理

 日本建築学会の設計倫理WGでは、「設計倫理」を設計者が身につけるべき「設計者の設計行為の倫理」として捉えて、建築の設計という創造的行為に携わる建築設計者が、日頃から目標とすべき倫理項目について検討を進めてきた。

 「設計行為における設計者の倫理目標リスト」は、設計行為に携わる建築設計者(意匠・計画分野、構造分野、環境・設備分野、都市計画分野等)を広く対象とし、建築設計者が目標とすべき倫理項目をまとめたものである。建築設計行為における設計者の意思決定と行動の枠組みを倫理の観点から理解することを目的としている。

 また、倫理の教育においては、教えることよりも考えさせることが重要であると言われる。「設計行為における設計者の倫理目標リスト」では、読者が自分自身と向き合い、考える中で、気づきを促し、理解を深めることができるように、問いかけを中心とした解説を行っている。質の高い建築をうみだすためには設計者はどのようなプロセスを経るべきなのか、よい建築つくっていくために、あるいは結果としてよい建築を実現するために、設計者が何を手がかりにどういう発想を持って仕事に取り組むべきなのか、倫理的な観点から理解することが重要である。学生だけでなく、実務に携わる方々に広く目を通していただければと考えている。

→設計行為における設計者の倫理目標リストとその解説

3. 構造設計に関する専門家倫理の育成の必要性と授業への展開

  • 3-1.構造設計に関する専門家倫理の育成の必要性

     日本建築学会 倫理用教材見直しWGでは、2003 年本会刊行の初めての技術者倫理教材である『建築倫理用教材』について内容の見直しを行い、建築分野における次世代の技術者倫理教育の方法とその教材のあり方を議論してきた。
     JABEE(日本技術者教育認定機構)の導入をきっかけとして教材化された『建築倫理用教材』2003年版の教材は、倫理に関する専門用語、定義、事例などを豊富に記載している。
    それ以後、2005 年耐震偽装問題により専門家は社会の厳しい批判にさらされ、さらに2011 年の東日本大震災は災害の頻発する日本での建築のあり方を根本から問い直すことになった。それらをふまえ、この教材に追加する内容として現代の社会から教育に求められているものは、次の3点であると考えた。

    • ①学習者の主体的な学習のための倫理的判断問題
    • ②問題解決型・ディスカッション型教材の導入
    • ③学習した結果どのような倫理を具体的に達成することができるかを
      目標記述型で示した「倫理の達成目標」の策定
  • 3-2. 3種類の教育ツールの特徴と主旨

    • ①学習者の主体的な学習のための倫理的判断問題
      それぞれの学習者が倫理に関する内容を、教えられておぼえるというような教育は倫理教育にはなじまない。学習者が主体的に学び、倫理的な判断を自らの力で行うような事例が必要である。そのための倫理的判断問題を作成した。
      倫理教育に「唯一の正解」というものはないが、教員が解説するための回答例も示した。
      →構造設計者・技術者の倫理的判断問題
    • ②問題解決型・ディスカッション型教材の導入
      事故事例や被害写真を提示することで学習者は視覚的・経験的な教育を受けることができるが、さらに一人一人が倫理的な判断を、なるべく現実的な環境の下で行う必要がある。高等教育ではディスカッションやグループワーク、ワークショップなどの手法を用いてこれらの現代的課題を学習者が主体的に考える形で扱うことが増えてきた。また教育目標の達成度を測るために、目標の明文化、達成度を評価するための評価手法が模索されてきた。これらを受けて、倫理目標リストを作成、それを基にした倫理的判断問題を作成した。
      →倫理目標リストを用いた授業への展開
    • ③学習した結果どのような倫理を具体的に達成することができるかを
      目標記述型で示した「倫理の達成目標」の策定

      授業内容を計画する教員にとっては、倫理教育によって学習者がどのような目標を達成するのかを検討する必要がある。そこで倫理教育における達成目標について、日本建築学会をはじめとする諸学会の倫理憲章、行動規範の文言を参照しつつ、実務者・研究者間で議論した「倫理目標リスト」を策定した。
      「建築構造分野における専門家の倫理目標リスト」(略称:倫理目標リスト)
      「建築構造分野における専門家の倫理目標リスト」の解説

    これらを3つの資料としてまとめた。詳しい使い方はそれぞれのリンク先に記述されているので、参考にしてほしい。

    これからの構造安全性については、本会が出版した『建築の構造設計 そのあるべき姿』(2010 年)も参考になるので、一読をお勧めする。

4. 建築環境倫理

5. 関連資料へのリンク

一般社団法人日本建築学会 倫理委員会

6. 委員会メンバー構成  

  倫理委員会
  委員長 松藤 泰典(北九州市立大学特任教授)
  幹 事 石川 孝重(日本女子大学教授)
五條 渉(国土技術政策総合研究所建築研究部部長)
  委 員 閑田 徹志(鹿島建設㈱技術研究所建築生産グループグループ長)
神田 順(日本大学特任教授)
倉本 洋(大阪大学教授)
郡 公子(宇都宮大学教授)
櫻井 一弥(東北学院大学准教授)
高巣 幸二(北九州市立大学准教授)
高橋 信之(早稲田大学総合研究機構教授)
外岡 豊(埼玉大学教授)
平田 京子(日本女子大学教授)
真木 康守((一社)日本建築学会専務理事)
牧村 功(名細環境・まちづくり研究室主宰)
増田 幸宏(芝浦工業大学准教授)
村松 映一((株)村松映一建築計画室主宰)
若井 正一(日本大学教授)
  建築倫理研究小委員会
  主 査 石川 孝重(日本女子大学教授)
  委 員 外岡 豊(埼玉大学教授)
平田 京子(日本女子大学教授)
増田 幸宏(芝浦工業大学准教授)
  建築倫理教材の見直しワーキング
  主 査 平田 京子(日本女子大学教授)
石井 透(清水建設(株)技術研究所地震動グループ長)
稲田 達夫(福岡大学教授)
島田 侑子(千葉大学准教授)
平川 倫生((株)三菱地所設計住環境設計部)
  オブザーバー 木下 智裕(JFE スチール(株)スチール研究所土木・建築研究部)
  建築環境倫理ワーキング
  主 査 外岡 豊(埼玉大学教授)
梅津喜美夫(東京工業大学大学院社会理工学研究科非常勤講師)
木俣 信行(持続可能社会研究会代表)
高草木 明(日本メックス(株)特別顧問)
松井 郁夫((有)松井郁夫建築設計事務所代表取締役)
  建築設計倫理ワーキング
  主 査 増田 幸宏(芝浦工業大学准教授)